公的年金の給付 老齢給付2 老齢厚生年金

老齢厚生年金には、「特別支給の老齢厚生年金」と「老齢厚生年金」の2種類がある。

 

「特別支給の老齢厚生年金」は、「定額部分」と「報酬比例部分」とに分類できる。

 


受給要件

特別支給の老齢厚生年金:60歳から64歳までに受給できる。
老齢厚生年金:65歳から死亡時まで国民年金の老齢基礎年金に加算され受給できる。

 

 

特別支給の老齢厚生年金

老齢厚生年金

受給開始年齢

60歳から65歳未満

65歳以上

受給資格

厚生年金の加入期間1年以上

厚生年金の加入期間1ヶ月以上

老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていること(平成298月以降は10年。平成297月以前は25年)。

 

*特別支給の老齢厚生年金は、生年月日によって受給開始年齢が異なる。


特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げ

注意1:上記画像内の「報酬比例部分」とは、稼ぎが多ければ多いほどたくさんもらえる。「定額部分」は、定額でもらえる部分。男性で、現在もらっている人は基本的にはいない。

 

まず、定額部分の引き上げが行われ、次に報酬比例部分の引き上げが実行される。

 

「特別支給の老齢厚生年金」の支給開始年齢は、「老齢厚生年金」よりも早い。
これは、「昔は、60歳から支給されていた老齢厚生年金だが、将来的には65歳からの支給になることが決まっている。

 

しかし、突然、支給年齢を引き上げると反発が出る。少しでもその反発を緩和するため、徐々に老齢厚生年金の受け取り年齢を上げていくことにする」…という事情によって行われている措置である。

 

最終的には、老齢厚生年金の支給年齢は65歳からというルールに一本化される。

 

特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は男性と女性で異なる。女性は、男性より5年遅れで引き上げられる。

 

注意2:「特別支給の老齢厚生年金」が無くなる年
男性…昭和36年4月2日以後に生まれた人
女性…昭和41年4月2日以降に生まれた人
暗記法:男はさぶろう(昭和36年)、女はよい子(昭和41年)。


年金額

特別支給の老齢厚生年金の年金額

 

「特別支給の老齢厚生年金」(60歳台前半)の年金額は、以下の計算式で出す。

 

@報酬比例部分+A定額部分+B加給年金額=特別支給の老齢厚生年金

 

@の報酬比例部分は、以下のAとBを足す。
報酬比例部分=A+B

 

A:平成15年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額×1,000分の7.125×平成15年3月以前の加入期間月数

 

B:平成15年4月以降の加入期間
平均標準報酬額×1,000分の5.481×平成15年4月以降の加入期間月数

 

*平均標準報酬月額:厚生年金保険に加入していた、平成15年3月以前の平均月収額
*平均標準報酬額:厚生年金保険に加入していた、平成15年4月以降の月収額と賞与を足したものを平均したもの。

 

A定額部分=1,625円×1.000×被保険者期間の月数(上限480月)

 


65歳以上の老齢厚生年金の年金額(経過的加算)

65歳以上は、「特別支給の老齢厚生年金」が以下のように変わる。
「特別支給の老齢厚生年金」の報酬比例部分→65歳以上は「老齢厚生年金」

 

「特別支給の老齢厚生年金」の定額部分→65歳以上は「老齢基礎年金」
65歳からの老齢基礎年金は、しばらくは定額部分より低額となる。不足する額を補てんする目的で「経過的加算」という調整が実施される。

 

経過的加算額=@定額部分に相当する額−A厚生年金保険の加入期間につき受け取れる老齢基礎年金の額

 

@=1,625円×厚生年金保険の被保険者月数
A=779,300円×(昭和36年4月以降で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者月数÷480月)

 

*FP試験では、計算式が提示されるので暗記の必要なし。実技で出るかも。

 

老齢厚生年金の繰上げ受給と繰下げ受給

 

老齢厚生年金の受給開始年齢は、老齢基礎年金と同じく65歳から。しかし、これも老齢基礎年金と同様に、繰上げ受給や繰下げ受給ができる。

 

繰上げ受給

繰上げ月数×0.5%減額
減額される最大割合:5年(60ヶ月)→60ヶ月×0.5%=30%
*最大で5年繰り上げて受給可能。その場合、30%減額される。
*老齢厚生年金の繰上げは老齢基礎年金の繰上げと併せて実施しなければならない。

 

繰下げ受給

繰下げ月数×0.7%増額
増額される最大割合:5年(60ヶ月)→60ヶ月×0.7%=42%
*最大で5年繰り下げて受給可能。その場合、42%増額される。
*老齢厚生年金の繰下げと老齢基礎年金の繰下げは同時でなくても良い。

 

注意1:繰上げ、繰下げした場合、割引、増額された年金額が生涯続く。
注意2:繰上げ、繰下げの減額率、増額率は老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに同率となっている。

 

特別支給の老齢厚生年金の特例

「特別支給の老齢厚生年金」には、障害者と長期加入者に適用される「受給開始年齢の特例」がある。
*ただし、この「特別支給の老齢厚生年金」の特例は、古い法律なのでFP試験ではほとんど出ない。

 

障害者の特例

以下の条件にあてはまる、障害等級3級以上の人は「特別支給の老齢厚生年金」の請求が可能。

 

  • 厚生年金被保険者期間が1年以上ある。
  • 現在は、厚生年金に加入していない。
  • 障害厚生年金の1級から3級に該当する、障害の状態にある人。

 

長期加入者の特例

以下の条件にあてはまる、長期加入者は「特別支給の老齢厚生年金」の請求が可能。

 

  • 現在は、厚生年金に加入していない。
  • 厚生年金被保険者期間が44年以上ある。

加給年金

加給手当は、「サラリーマンの奥さん(専業主婦など)のための年金」と考えると分かりやすい。
夫が、年金をもらい始めたら、その妻が受給できる。加給年金額加算のためには、届出が必要。

対象者

加給年金額

厚生年金の被保険者期間が20年以上あり、その加入者によって生計維持されている

65歳未満の配偶者」

224,300

(受給権者の生年月日により特別加算がある)

18歳になり最初の331日までの年齢の子

1人目と2人目=各224,300

3人目以降=74,800

20歳未満で障害等級1級か2級の子

1人目と2人目=各224,300

3人目以降=74,800

 

 

厚生年金制度が始まったときには、ほとんどの働き手は男性だった。最初のうち女性は厚生年金に加入ができなかった。そのような事情を背景として作られた制度がこの加給年金である。

 

厚生年金の被保険者期間の20年以上とは、夫(第2号被保険者)が厚生年金を支払った期間が20年以上ということ。

 

【加給年金は振替加算に切り替わる】
加給年金は、配偶者が65歳になり老齢基礎年金の受給が始まると支給が停止する。その代わり、配偶者の老齢基礎年金に振替加算が上乗せで給付される。

 

例えば、サラリーマンの夫に養われている妻(配偶者)の場合、妻が65歳になり老齢基礎年金を受給するようになったら、夫の加給年金は終了し、妻の老齢基礎年金に振替加算が上乗せされる。

 

 

振替加算の額は、老齢年金を受け取る配偶者の生年月日に応じた金額が加算される。

 

加給年金は本人の生年月日、振替加算は配偶者の生年月日で受給額が変わってくる。

在職老齢年金


60歳以降、企業で働くと老齢厚生年金が支給停止や減額になることを「在職老齢年金」という。ただし、あくまで支給停止となるのは、老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は全額支給される。
*FP試験によく出るところ。

 

総報酬月額相当額=標準報酬月額+1年間の標準賞与額÷12ヶ月
年金の基本月額=老齢厚生年金(定額部分+報酬比例部分÷12ヶ月

 

→ざっくり言えば、会社から支払われている月収と老齢厚生年金の月額を合わせた額が、規定の額より大きければ年金の支給が止まる。

 

65歳未満

65歳以上(70歳以上も含む)

総報酬月額相当額+年金の基本月額の合計額が

28万円以下

28万円超

46万円超

46万円以下

46万円超

0円(全額支給)

年金は全額支給される

一定額が支給停止

46万円を上回る部分は支給停止

0円(全額支給)

年金は全額支給される

46万円を超える額の2分の1または全額支給停止

 

70歳以上は、65歳以上の支給停止額と同じだが、70歳以上は厚生年金の被保険者から外れるので、年金保険料の負担はなくなる。


離婚時の年金分割制度

離婚をするときに、婚姻期間中の厚生年金を分割できる制度。
離婚時の年金分割方法には、以下の2種類がある。

合意分割

平成194月以降の離婚が対象。

離婚した二人の合意により、年金分割の割合を定めている→上限2分の1

請求期限は、離婚した日の翌日から2年以内。

離婚時に分割された厚生年金の保険料納付期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されない。

*夫婦の合意が必要。

3号分割

平成205月以降の離婚が対象。

平成204月以降に国民年金の第3号被保険者だった期間がある。

請求期限は、離婚した日の翌日から2年以内。分割割合は2分の1

離婚時に分割された厚生年金の保険料納付期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されない。

*夫婦の合意不要。第3号被保険者からの請求により分割できる。

 

「合意分割」、「3号分割」ともに、事実婚関係(夫婦のどちらかが国民年金の第3号被保険者だった場合のみ)でも利用できる。

 


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